「月から聴いてるよ」というアルバムコンセプトからわかる通り、今回は日本の物語を意識したものだったと思う。 特に竹取物語を強く感じた。

しかし、単純なかぐや姫が月からやってきて月に帰るという竹取物語を単純になぞっていたわけではない。 竹取物語では終盤に月からかぐや姫を迎えに来る。 その迎えの中では月の王しか喋らないが、迎え自体は複数人で来たようである。 その中のかぐや姫と旧知の者が今回のもう1人の主要人物である。

これらを曲を並べて紹介していこう。 公式のセットリストでの色分け1が答え合わせのようなものなのでそれに合わせて述べていく。

DAY1

本編

  • 一寸先は光
  • 旅しよ!don’t you?
  • きまぐれチクタック

竹取物語ではかぐや姫は月から流刑にされたような扱いとなっている。 この3曲は刑の前の概ね楽しかった時代を示しているのだろう。

特に一寸先は光は地球から見る光としての月から始まっている事を示していそうだ。

  • Nephelis
  • Jasmine
  • 縁のまにまに
  • アルビレオの硝燈
  • 唯-tata-

ここは月での別れである。 地上に降り立つ事を求められ、周囲の者に別れを告げ、旅立っていく。 そうしたシーンである。

勿論、竹取物語ではそんなシーンは存在しない。 ここはあくまで作った場面だろう。

しかし荒唐無稽というものでもない。 そのかぐや姫は罰を償う為に地球に来たのに、刑期が終わったからとわざわざ王まで迎えまで来てもらえる程の人物である。 流刑の前に情をかけてもらうくらいはそうおかしな事ではないだろう。

また、楽曲としてこのパートで大事な部分はDAY1はかぐや姫視点と示された事である。 まずどの曲も概ね2人が存在する曲であって、その一方の視点を使いたいというのがDAY1での意図なのだろう。 かぐや姫と名もなき者の物語だったとは先に述べた通りだが、2人の曲だからこそ一方の視点で使う。 DAY2でも同じ曲を使うのは他方の視点を示したいからである。

曲単位で何をしていたかを考えてみると、Nephelisは月の王から刑を言い渡された場面で、アルビレオの硝燈は別れを告げ降り立つ場面、唯-tada-が降り立って1人となった場面だろうか。

  • Pixy Pixy
  • ブルー・フェアリー
  • トゥインクル・デイズ
  • 金色イニシエィション

ここはかぐや姫が地球に降りてからの話である。 翁に発見され養育され、評判が立ってきた辺りだろうか。

Pixy Pixyやブルー・フェアリーなんかはわかりやすく人ならざるものとしてかぐや姫を見つけたシーンだろう。 超人的なものを示すだけならブルー・フェアリーだけでも通じそうだが、竹取物語だからこそPixy Pixyもやったように思う。 あのキラキラした感じは光っていた竹も示しているのだろう。

残りの2曲はかぐや姫が地球での生活を楽しんでいるようにも思えるが、どちらかと言えば周囲の反応を示しているように思う。 かぐや姫の権能により翁は金銭的にも社会的にも成功し、宴も頻繁に開いていたようである。 それを示したのだと思う。 また、金色イニシエィションは飛び曲だが、これをかぐや姫の評判が立ってきている事と見る事もできそうだ。 更に浮足立っているとも言える。 楽しみで浮き浮きする様を「浮足立つ」と称する事は誤用とされているが、実際はこの用法が多数派となっている2。 この誤用すら月人と地球人の差異の一端とすら見る事ができるかもしれない。

このパートの前にダンスパートがあったが、この解釈はやや難しい。 基本的には場面転換と考えているが、一旦地球側の話と場所の転換を示したようにも思える。

  • Unfair Mirror
  • サンチマンタリスム
  • 雪のかけら
  • Love is a potion
  • Dorothy

こちらは5つの難題から月の使者が来た所までを一気にやってしまっている。 急だからこそ直球な選曲でもある。

Unfair Mirrorとサンチマンタリスムはわかりやすく難題の部分である。 Unfair Mirrorでは解けない難題を悩ましく思う気持ちが芽生え、サンチマンタリスムに向かって怒りと苦しみに変わっていく。

一方で、雪のかけらは雪は雪でも雪解けである。 かぐや姫は帝からの求婚を断ったものの、文を送り合う程度には打ち解けていた。 そうした様を示しているのだろう。

その時期まで来るとかぐや姫は刑期の終わりを意識する。 Love is a potionは不死の薬であり、りんごでもある。 薬にしても食物にしても、口に入れるもの1つとってもあまりに違う彼我の差を改めて意識し、月への帰還に侘しさを感じているのだ。

そして、Drothyは月からの使者の到着、あるいは地球への航行である。 既に予感はしていたが、実際に来てしまった状態である。 流刑という旅の終わりが見えた瞬間である。

アンコール

  • カラフル×ジョイフル
  • twin’s heart beat
  • HoneyDrop

アンコールは本編と全く違うものをやっていたように思う。 コミックで言ったらカバー裏のおまけ漫画である。 本編の項ではお迎えがきたとしたが、ここはカバー裏らしくそれらとは全く独立したエンタテインメントシーンだ。 ただ、2人がテーマと述べた通り、2人である事が強調された選曲ではあった。

DAY2

本編

  • HyperLoveSong
  • トゥインクル・デイズ
  • Pixy Pixy
  • 金色イニシエィション
  • 眠れぬ森

DAY2は先にも述べた名もなき共犯者がメインで物語が展開されていく。 だからこそ、当日の演出としては開始前のスクリーンに写っていたのは前日の月と違って地球だった。 月に残されたものから続きが始まるのだ。

そこで昨日やらなかったHyperLoveSongから始まったのは何故か。 それはDAY2はかぐや姫ではない視点から始まった事を示したかったのだろう。 お話として見なければHyperLoveSongなんて両日やっても盛り上がっていい。 しかしそういうコンセプトではないから、やらないからには意味がある。 かぐや姫では言えない話だったのである。

かぐや姫では言えない話とは何か。 言うまでもなく流刑に処された罪の理由である。 そもそも流刑にしたのに迎えに来るなんて考えにくいお話をやっているのである。 王を含めて未練のあるような状況に陥るような罪としては愛に関するものは妥当だろう。

だとするとトゥインクル・デイズから金色イニシエィションは明るく思えるかもしれないが、上手く行っている内は楽しいものである。 Pixy Pixyのようにバレないと思って1人ずつという顔をして投稿してしまうものである。

しかし、そんな絶頂期は続かない。 金色を称える満月も欠けていく。 関係が明らかになり壊れていけば、眠れぬ森に足を踏み入れるばかりだ。

  • 雪のかけら
  • Love is potion
  • サンチマンタリスム

ここではもうかぐや姫は地球に行ってしまったのだろう。 ともに罪を犯し、かぐや姫だけが流刑に処された。 安心してしまったのではないか。 だからこそ不安が解け、迎えに行く時の薬を準備するといった次に会う時の事まで考えてしまったのではないだろうか。

しかし、そんなものは虚脱後の一時的な反応である。 一旦、他人事にできたからこそ余計な事を考えていたのだ。 冷静になったら怒りが込み上げてくるだろう、何が悪いのかと。 何故かぐや姫だけなのかと。

  • 旅しよ!don’t you?
  • カラフル×ジョイフル

今回のダンスパートは移動シーンを示したかったのだと思う。 迎えに来るからこそだ。

そして選曲としては妙に楽しいが、かぐや姫との楽しい時間を夢想したのだろう。 彼の科学力はわからないが、移動時間には好みが出るかもしれない。 一瞬で走馬灯のように思い出したとも、仮眠を取る程度の時間があったとも思える。 どちらでも成立するが、DAY1のDrothyでかぐや姫が月からの航行を見ていたと思えば後者がよいだろうか。

  • アラビアン・ユートピアン
  • Jasmine
  • Nephelis
  • 縁のまにまに
  • マイペースにマーメイド
  • アルビレオの硝燈
  • 唯-tada-

このパートは場面数に対して曲数がかなり多い。 実際、もう月に連れて帰るだけなのでそうなってしまう。

アラビアン・ユートピアンやJasmineは権能の話だ。 月から来た者達には地上の戦士は何の用も為さず、眩いばかりに美しい。 そうした非現実的なものに圧倒される。

しかしNephelisはそうではない。 互いに近づける者達のやり取りである。 そう、これはかぐや姫とその共犯者の邂逅だ。 愛に溺れていた日を思い出したのだ。

ここでライヴ演出としては数分の幕間が入る。 竹取物語でもかぐや姫が連れて行かれる時に悲しんでいたが、羽衣を着せられるとすっかり忘れたかのようになった。 これを示したのがこの幕間なのだろう。

だからこそ、縁のまにまにやマイペースにマーメイドのように希望的になっている。 また、残していった薬は衣装の雰囲気としては龍宮信仰のような意識もあったのかもしれない。

そして、銀河鉄道に乗って月へと帰っていく。 羽衣を着てしまえば楽しい日々である。 しかしそんなものは幻想である。

だからこそ、唯-tada-ではそれを幻想だと看破する。 本編としては気づいてしまったかぐや姫で一旦の終わりである。

アンコール

  • 一寸先は光
  • twin’s heart beat
  • Dorothy

前日に引き続いてアンコールはカバー裏おまけ漫画である。 所で、最終巻のカバー裏には何が書いてあるだろう。 感謝もあるだろう、無念もあるだろう、全く異なる妄想もあるだろう。 しかし今回のライヴは旅である。 ツアーと銘打ってはいないが、月と地球の旅である。 ロードムービーの最後は何で終わるか。 死か新たな旅か。 そう、Dorothyという新たな旅で月を離れたのだ。